入学式

入学式全景

2017.04.10

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学校長式辞

入学式式辞

 本日、三木学園白陵中学校・白陵高等学校に入学された385名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。ご列席の野添育友会長様をはじめとするご来賓の方々、および教職員とともに、皆さんの入学を心よりお祝い申し上げます。皆さんは本学園入学に向けて、一生懸命に取り組んできたことと思います。その努力に対して敬意を表すると同時に、暖かい愛情を持って皆さんを支えてこられた保護者の方々をはじめ、関係された皆様に心よりお祝いを申し上げます。

 4月というのは、学校が始まるのに最も良い季節だと感じる日本人は多いと思います。ある春に始まり、いくつかの冬を越えて、また春に卒業していく、この道程が子供から大人に成長していく教育現場の有り様とうまく重なり合うのかもしれません。少しご年配なら「冬来たりなば春遠からじ」という言葉がふと唇から出てくる方もおられるでしょう。これはイギリスの詩人シェリーの『西風に寄せる歌』の最後に出てくる
 If winter comes, can spring be far behind?
の日本語訳です。冬と春が対比している印象的なフレーズです。

 さて、成長においてこの「冬」というのはどういう意味を持つのでしょう。入学された皆さんに待っているのは「自己の確立」という大仕事です。新しい環境でとりあえず自分の居場所をつくる、太刀打ちできそうもない優秀な同級生を目の前にしてさて自分はと考える、頭の中にどうしてもしっくり入ってこない事柄をなんとか吸収しようとする、お父さんやお母さんに自分の考えを素直に話す、この世界において自分とは何で、何をすべきかと考える、これらはどれをとってもつまずきそうなことばかりです。寒々として先の見えない冬となることもあるでしょう。このとき、冬は冬として逃げないでじっくり時間をかけて、自分と、自分を取り巻く環境とをすり合わせていくことです。このようにして人間はたくましく育っていきます。そして他人とは違う自分というものがしだいにできていきます。大きな野望を持ってください。遠大な目標に心が折れそうになることもあるでしょう。そんな時は到達可能で短期的な目標を設定するのがコツです。困ったときは先生に相談してください。そういう皆さんに、どれだけ前向きな手を差し伸べることができるか、それがその学校の持っている力だと考えています。また、ご家族の方には「待つ」ということをお願いいたします。すぐに結果を求めるのではなく、腰を据えて暖かく見守っていただければと思います。

 さきほど「たくましく育つ」といいましたが、たくましく育つことはいつの世でも求められてきたことです。このことは現代でも同じで、その意義はむしろより大きくなっています。その理由を少し説明してみましょう。
「啓蒙」という言葉があります。蒙を啓く。すなわち、暗い野蛮な部分に理性の光を当てていくということです。古代や中世においては、人間は大いなるものに生かされている存在でした。自然や宗教の支配下にあったと言えます。そこに啓蒙思想というのが起こり、人間こそ一番偉いという存在になります。人権主義、民主主義、資本主義、科学主義といったものが花開きます。これが近世および現代です。
 さて、第2次世界大戦でドイツは、日本と共に全世界を敵にまわして戦うことになりました。そのヒットラーが主導したナチス政権が倒され、戦争が終わって1947年に出版された本に、『啓蒙の弁証法』というのがあります。ホルクハイマーとアドルノという二人の哲学者による共著です。ここでいう弁証法というのは、物事の対立や矛盾を克服し、さらに高い次元での統合をはかる考え方を言います。難しいですね。簡単な例でいいましょう。田中君はこれを赤色だと言いました。一方、中村君は、いやいやこれは白だと言いました。これでは困りますね。このとき、これは見る方向によって色の違うものだと考えられないか、といった具合です。ということは、この本では啓蒙には2つの対立するものがあると主張することになります。それはどういうことでしょう。

 ナチスは最初から野蛮であったわけではありません。当時、世界の中で最も文化的であったドイツにおいて、民主的な手続きを経て生まれたのがナチス政権です。ユダヤ人に対する不平不満をあおり、それを増幅させていきました。すべてを飲み込んでいく啓蒙の光は、それが人間にも及んだ時、人間自体を管理し閉じ込める暗い光にもなってしまったのです。人間を自由にするはずのものが、逆に人間を不自由にする。これは、最近アメリカやヨーロッパで起こっているいくつかの現象を正しく言い当てたものになっていないでしょうか。同じことは、「ビッグデータ」や「AI(人工知能)」などが、その利用の仕方によっては単に明るい未来を招くものではなく、人間の疎外を引き起こすものになると考えられていることについても言えます。ちなみに、この本は次の言葉で終わります。「自己自身を支配し、暴力ともなる啓蒙がそれ自身、啓蒙の限界を打破する力になりうる」と。私たちに大きな勇気を与えてくれる言葉ではないでしょうか。私たちは今、より次元の高い啓蒙を実現するべき時代の最先端に立たされているのです。目指すのは、自他がともに尊い存在であると考える仲の良い世の中です。これはたくましくなければできませんね。

 最初に紹介したのはシェリーの詩の最後のフレーズでした。その1行前には
 The trumpet of a prophecy! O Wind
とあります。訳すると、「おお、風よ、予言の喇叭を聞かせてくれ!」といったところでしょうか。どんなに厳しい、寒々とした風が吹いても、その中に春の訪れの予兆を聞き取ろうとする叫びです。白陵は一人一人が自己を確立する中でこの叫びを分かち合う仲間たちの集まりです。この入学式の最後で歌う「白陵の歌」はそのような気持ちを余すことなく表現した歌です。吹奏楽部の切れのある、そして青空に突き抜けるような演奏にあわせて、皆で大きな声で歌い、この門出にしようではありませんか。

 最後に改めて、白陵中学55期になります中学1年生、白陵高校55期になります高校1年生が、大きくたくましく成長していきますことを祈念し、お祝いと激励の式辞といたします。

平成29年4月10日
     学校法人三木学園白陵中学校・白陵高等学校  校長  宮﨑 陽太郎

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入学式の一日

第55回入学式の日です。

2017.04.10


入学式の看板の前で記念撮影の列ができています。


桜が満開です。


新入生が集まります。


入学式前の諸注意。


白陵高等学校、入学許可宣言。


白陵中学校、入学許可宣言。


校長式辞。


入学生代表による宣誓。


宣誓書を渡します。


育友会会長の祝辞。


新高校1年の学年団の先生方が紹介されます。


新中学1年の学年団の先生方が紹介されます。


吹奏楽部が活躍しました。







記念撮影。



桜の中を校舎に戻ります。












最初のホームルームです。

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